Column

IPMモーターとは ― 高効率化を実現するモーター技術

モーター

モーターは、産業機器や家電、電動モビリティーなど多くの製品で使用される重要な駆動源です。近年は省エネルギー化の要求が高まる中で、装置の性能や用途に応じて、より高効率なモーターを適切に選定することが重要になっています。

その中で注目されている技術の一つが、IPMモーター(Interior Permanent Magnet Motor:埋込磁石式モーター)です。IPMモーターは高効率・高出力密度といった特長を持ち、電気自動車(EV)や産業機器など幅広い分野で採用が進んでいます。

本コラムでは、IPMモーターについて2回に分けて解説します。第1回では、IPMモーターの基本的な仕組みや特長、他の方式のモーターとの違いについて紹介します。

2回では、IPMモーターを選定する際に考慮しておきたいポイントについて解説します。

 

1.IPMモーターとは

IPMモーターは、回転子(ローター)の内部に永久磁石を埋め込んだ構造を持つモーターです。永久磁石を利用することで高効率な運転が可能です。そのため、EVや産業用サーボモーター、家電製品など幅広い分野で採用されています。

モーターには図1のようにさまざまな種類がありますが、IPMモーターは同期モーターに分類されます。非同期モーターに分類される誘導モーターとは、回転の仕組みや制御方式が異なります。

差替え画像1                                                                         図1.モーターの分類

 

2.IPMモーターの構造的特長

IPMモーターは、永久磁石をローター内部に配置している点が大きな特長です。

一方、同じ永久磁石式モーターで、磁石をローター表面に配置するSPMモーターは、構造がシンプルであるため、設計・制御・製造が比較的容易です。

これに対してIPMモーターは、磁石をローター内部に埋め込む構造のため、設計・制御・製造の難易度は高くなりますが、磁石が遠心力の影響を受けにくく、高速回転に適しています。(図2参照)

そのため、高速回転が求められる用途においては、IPMモーターが有効な選択肢となります。モーター選定の際には、装置の最高回転数や必要な出力条件を考慮することが重要です。これ以外にもIPMモーターの選定にはいくつかのポイントがあり、それらについては次回のコラムで解説します。
図2.磁石モーターのローター構造比較

           図2.磁石モーターのローター構造比較

 

3.IPMモーターのトルク発生の仕組み

IPMモーターは、永久磁石による「マグネットトルク」と、鉄の部分を利用した「リラクタンストルク」の両方を得られることが特長です。(補足1参照)

これら2つのトルクの組み合わせにより、トルク特性や効率特性に幅を持たせることができます。そのため、他の方式のモーターと比較して高トルク・高効率・高出力密度を実現しやすく、さまざまなアプリケーションに適した特性を持つモーターを選択することが可能です。また、モーターコントローラーによる適切な電流制御を行うことで、IPMモーターの性能を最大限に引き出すことができます。その結果、

・消費電力の低減

・装置の小型化

・発熱の抑制

といったメリットが期待できます。

 

補足1:リラクタンストルクとは

磁力線が磁気抵抗(リラクタンス)の小さい経路、つまり通りやすい経路を通ろうとする性質によって生じるトルクです。

身近な例として、磁石と釘を使った現象があります。下図にてイメージをご説明します。

 

 釘が

   磁力線の流れに揃おうとして          回転する   

最最新_画像2                                                       図3.リラクタンストルクによる回転のイメージ

 

4. IPMモーターが高効率を実現できる理由

IPMモーターでは永久磁石を使用するため、誘導モーターのようにローターに電流が流れることによる二次銅損が発生しません。

このため、低速から高速まで幅広い運転領域で高い効率を維持しやすいという特長があります。消費電力の削減だけでなく、発熱の低減や冷却負荷の低減にもつながるため、装置全体のエネルギー効率向上にも貢献します。

 

5.まとめ

IPMモーターは、永久磁石を活用した構造により、幅広い運転領域で高い効率を維持しやすいモーターです。このような特長から、近年では産業機器や電動モビリティーなど、さまざまな分野で採用が進んでいます。一方で、IPMモーターの性能を十分に活かすためには、用途や運転条件に応じた適切なモーター選定が重要になります。

次回は、IPMモーターを選定する際に考慮しておきたいポイントについて解説します。