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IPMモーターとは(2) ― 高効率化を実現するモーター技術

【モーター】

前回のコラムでは、IPMモーターの基本構造やトルク発生のしくみ、高効率を実現できる理由について解説しました。IPMモーターは高効率・高出力密度といった特長を持ち、電動モビリティーの走行モーターとして広く採用されています。

一口にIPMモーターといっても、磁石の配置やローター構造の違いなどにより複数の種類が存在し、それぞれ特性や適した用途が異なります。こうした構造の違いを理解し、目的に応じて最適なタイプを選ぶことが重要です。 

最新図1永久磁石モータのロータ構造の違い1.永久磁石モーターのローター構造の違い

本コラムでは、電動モビリティーの走行モーターとしてIPMモーターを選定する際に考慮しておきたい主なポイントについて解説します。

 

1.高回転域での効率

マグネットトルクを多く活用したモーターは、磁石磁束が大きい傾向があります。ローターが回転することにより逆起電力と呼ばれる電力が発生し、回転数が高くなると発生した電圧がバッテリーの電源電圧を上回る場合があります(補足2)

 

[補足2]

ここでは、自転車の発電ライトを例に説明します。
ゆっくり走っているときにはライトは少し暗く、速く走るとライトが明るくなります。   これは、車輪の回転によって発電機の磁石が回り、回転が速くなるほど発生する電圧が    大きくなるためです。

 

この時に発生した電圧が電源電圧に近づく、または上回ると、インバータで印加できる電圧マージンが小さくなり、モーター電流の制御が難しくなります。そのため、高回転域(図2)では弱め界磁制御を用いて、電流により磁束を抑える必要があります。(図3

図2 NT曲線で見る高回転域のイメージ  図2. NT曲線で見る高回転域のイメージ

                                         

最新図3弱め界磁制御のイメージ

3.弱め界磁制御のイメージ

弱め界磁制御は一般的に効率が低下する傾向があります。                そのため、必要な回転数範囲やトルク条件に合わせて磁束量が適切なモーターを選定し、使用頻度が高い運転領域が、高効率領域に入るようにすることが重要です。

 

2.熱設計への影響

IPMモーターは誘導モーターのような回転子電流による二次銅損(図4)が発生しないため、損失(発熱)を抑えやすいという特長があります。このため、密閉構造が必要な場合や、粉塵環境などで冷却方法が制限される用途においても、温度上昇を抑えやすいモーターとして選定の候補となります。

図4 誘導モーターローターのかご導体での発熱のイメージpng

        図4.誘導モーターローターのかご導体での発熱のイメージ 

さらに、IPMモーターは永久磁石を活用することで高出力密度を実現でき、装置の小型化に寄与します。しかし、小型化が進むとモーターの熱容量(蓄えられる熱量)が小さくなるため、発熱量が小さくても運転条件によっては温度上昇が速くなる場合があります。そのため、高温環境での使用や高負荷運転が想定される用途では、冷却方式や装置全体の熱設計に変更が必要となる場合があります。

既存の装置構成や冷却方式をそのまま活用したい場合は、出力密度を過度に高めてモーター体格を極端に小さくするのではなく、一定の体格を確保し、温度上昇とのバランスを取ることが重要です。鉄心の活用によりリラクタンストルクと十分な熱容量を確保したモーターを選定することで、既存の熱設計への影響を抑えつつ、磁石使用量の低減と高効率化を両立することができます。

 

3.磁石材料の調達性

永久磁石式モーターでは、ネオジム磁石などのレアアース磁石が使用されることが多く、昨今では磁石材料の価格変動に加え、供給リスクが大きな社会問題になっています。そのため、永久磁石の磁力を低減し、リラクタンストルクを活用することで、磁石使用量を抑えた構造も選択肢となります。

モーターを選定する際には、調達性やコストを検討するために、使用されている磁石材料の種類(ネオジム磁石、フェライト磁石など)や磁石使用量を確認することが重要です。用途によっては、フェライト磁石など調達リスクの低い材料を使用した製品を選択することも有効です。

 

4.不可逆減磁への配慮

永久磁石は、磁石温度や電流による逆磁界の影響によっては、磁力が不可逆的に低下する可能性があります。そのため、使用環境や運転条件を考慮してモーターを選定することが大切です。

磁石の種類によって減磁特性は異なります。例えば、フェライト磁石は低温時、ネオジム磁石は高温時で不可逆減磁が発生しやすいといった特性があります。想定される周囲温度や負荷条件を踏まえ、モーター仕様として許容されている使用温度と磁石仕様を確認することが重要です。これらの条件と実使用時の余裕度を確認することで、不可逆減磁のリスクを低減することができます。

 

5.まとめ

IPMモーターは、高効率・高出力密度という特長を持つことから、電動モビリティーの走行モーターとして広く採用されています。走行モーターの選定においては、車両の要求トルクや回転数、冷却条件などの運転条件を考慮し、車両動作に適したモーターを選定することが大切です。また、使用する磁石材料の調達性や、過電流や温度条件によって生じる可能性のある不可逆減磁への配慮も重要な検討要素となります。

IPMモーターの特長を正しく理解し適切に活用することで、車両の高効率化や省エネルギー化に貢献することができるのです。