これらの運転状況すべてで、モーターが高効率を維持することが車両の省エネルギー性能や航続距離、さらには環境性能に直接寄与します。ただし、モーターの効率は、回転速度や負荷条件で大きく変化するため、広範囲の動作条件下で効率を維持するには高度な技術が求められます。
2.広い動作範囲で効率を確保するための主な技術
広い動作範囲での効率向上を実現するための技術として、モーターの電磁気設計から、材料選定、制御技術に至るまで幅広い技術があります。
1)電磁気設計の最適化
通常、モーターの効率は動作点(回転数・トルク値)に大きく依存するため、効率のピークとなる範囲を広げたり、高効率ポイントを主要動作点に最適化する設計が必要になります。例えば、誘導モーターであればスロット形状や巻き線の最適化、永久磁石モーターであれば磁石特性に適した最適形状設計などがあげられます。
2)モーター材料技術
効率向上には、高性能な材料の使用が不可欠です。たとえば、鉄心材(電磁鋼板)にはグレードがあり、高効率を実現するためにはより高いグレードの鋼板を選択します。また、永久磁石モーターでは、フェライト磁石や高性能なネオジム磁石(Nd-Fe-B)を採用することで、励磁電流が不要となるため励磁損失を抑えることが可能になります。
3)インバーター制御の高度化
モーターの電力供給を最適化するインバーター制御は、モーターの効率向上に直結します。モーターを低回転から高回転まで効率的に制御できるベクトル制御に加え、誘導モーターであればモーターの抵抗やインダクタンスといった個々のパラメータにあわせた制御最適化や、永久磁石モーターであれば高回転域で弱め界磁制御といった技術を適用することで、モーターの動作点に応じた高効率な運転を実現します。
3.モーター効率マップ
それでは広い範囲で高効率を実現するモーターと、そうではないモーターを見分ける方法はあるのでしょうか。一般的にモーターの定格出力は熱定格で書かれることが多く、それは定点での出力を指すため、残念ながら定格出力から走行モーターの効率の良しあしを見分けることはできません。
そこで活用するのがモーター効率マップです。モーター効率マップはモーター動作範囲内で、どれだけ高い効率を実現できるかを表したマップで、車両走行用モーターを採用する際には必須の情報と言えます。