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モーター定格出力とは(2)

モーター

発熱、時間と定格出力の関係

 

初回のコラムでは、モーターの出力や効率、損失について解説しました。この第2回では、モーターの「発熱」と「動作時間」がその性能にどのように影響を与えるのか、モーター出力との関係について掘り下げていきます。

まず、モーターは電気エネルギーを機械エネルギーに変換する(軸を回転させる力に変える)過程で、必ず損失が発生し、その結果として熱が生じます。この発熱がモーターの内部部品にどのような影響を与えるのか、これから解説していきます。

モーターの内部部品(例:コイル、ベアリング、樹脂材料等)には、耐熱温度の限界があります。適正温度を超えると部品の寿命が縮み、故障や、最悪の場合には発火などの重大事故に至るリスクもあります。そのためモーターを適切な温度範囲で使用することが必要不可欠です。

 

さてここからが重要です。

モーターの使用温度は、動作雰囲気温度モーター損失にともなう発熱の合計値になります。このモーターの発熱は動作パターン(動作時間と休止時間の組み合わせ)の影響を受けるため、動作パターンによってモーターが出せる出力(定格出力)も変化するということになります。

モーター温度  =  動作雰囲気温度 + モーター発熱 ≦ モーター温度上限

                    

               動作パターンの影響を受ける

定格出力と動作時間の関係のイメージ図

 

この出力を決めるための動作パターンは、時間定格とも呼ばれ、国際電気標準会議(IEC)によって規格化されています。代表的なものには以下があります

 

S1(連続定格)          :モーターが継続運転可能な出力定格

S2(短時間定格)     :指定された時間だけ継続運転可能な出力定格(例:S2 60min

S3S8(反復定格):断続的な運転と停止の組み合わせを想定した出力定格

S9(非反復定格)     :負荷と速度が高度に変動する運転条件を対象にした出力定格

S10(段階的負荷定格):多段階の負荷条件に対応する特別な出力定格

 

これはS1S2S3の定格出力と動作パターンの例です。同じモーターであっても、定格条件によってモーター出力が変動することがおわかりいただけると思います。

S1、S2、S3の定格出力と動作パターンの例

 

モーターを選定する上で、何より重要なのは、実動作に近い定格条件(動作パターン)を選択してからモーター出力を決めることなのです。

 

さていよいよ次回は最終回です。こちらもモーターの出力に大きく影響を与えるモーター冷却方式について解説します。冷却はモーターの搭載設計において、小型高出力化や耐久性向上を図るのに欠かせない要素です。ぜひご期待ください。