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モーター定格出力とは(1)

モーター

モーターを理解する上で欠かせない出力、効率、損失について

 

モーターは、電化製品から工業設備、自動車に至るまで、私たちの生活に欠かせない部品です。ではモーターの性能を示す“出力”には、様々な前提条件があることをご存じでしょうか?

今回のコラムでは、その中で特に重要な前提である“定格出力”について3回にわけて解説します。

 

1.モーター出力とは

モーター出力とは、モーターの性能を評価する基本的な指標です。具体的には、トルク(モーター軸をねじる力)×モーター回転数の関係で示される、モーターが出せる機械的エネルギーのことです。式で表すと、こうなります。

 

モーター出力[W] = トルク[N] × モーター回転速度[rad/sec]

(補足: [rad/sec]はrpm(1分当りの回転数)に2π/60を掛けたものです)

 

2.モーター効率について

同じモーター出力を、電気エネルギーと効率の観点から見ると、モーターへの入力電力(電気的エネルギー)×モーター効率(電力変換効率)となります。式で表すと、このようになります。

 

モーター出力[W] = モーター入力電力[W] × モーター効率[]

 

この式から電気エネルギーを有効に使用する上で、モーター効率がとても重要であることがわかります。

例えば、2023年度の日本国内全体の電力総需が8496kWh、このうち産業用モーターが使用する電力は約40%といわれているので年間約3400kWh、そのうち効率が1%でも改善すると約34kWhの電力消費の削減になります。

この34kkWhを太陽光発電に換算すると約3.4平方キロメートル(東京ドームの約72個分)に、原子力発電1基であれば約半年分の発電量に相当します。たとえ1%であっても、モーター効率をあげることが、とても大切だとかわかりますね。

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3.モーター損失について

続いて損失について解説します。損失は以下の式で表されます。 

 

損失[W] = モーター入力電力[W] – モーター出力[W] 

 

入力した電力のうち、出力として利用できなかったエネルギーが損失です。損失の内訳として、電気抵抗や摩擦による発熱エネルギーが挙げられ、これらがモーターの温度上昇につながります。

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 また損失をモーター効率で表すと、以下の式になります。

 

損失[W] = モーター入力電力[W] x(1-モーター効率[%])

 

モーター効率が高くなると、反対にモーター損失は低下することがわかります。

 

次回は、モーターの損失による温度上昇が性能にどのように影響するのか、そして『定格出力』がなぜ重要なのかについて掘り下げます。ぜひご期待ください。