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FCモジュール導入事例

Application定置式発電機

導入製品:FCモジュール

幅広いお客様からのニーズに対応するため、
氷点下対応の定置式燃料電池発電機(コンセプトモデル)を開発しました。

ブラザー工業株式会社様

新規事業推進部 技術推進2グループ
グループ・マネジャー
中村 満様

はじめに

今回、豊田自動織機の燃料電池モジュールをご採用いただいたブラザー工業様は、水素燃料電池発電機の製品化にいち早く取り組まれ、すでに市場での実績も多数お持ちです。今回、水素燃料電池発電機を製品化された経緯と、開発中の次期型発電機である「7kW純水素型燃料電池(コンセプトモデル)」についてブラザー工業株式会社 中村様にお伺いしました。
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開発の背景

株式会社ニッセイの技術を継承し、新規事業として開発をスタート

もともとは、ブラザー工業が完全子会社化した株式会社ニッセイ(以下、ニッセイ)が燃料電池の開発を始めたことでした。
ニッセイは主に歯車やギアモータを製造・販売している会社ですが、一方で独自にエネルギーをテーマとした技術開発を検討していました。その中で水素燃料電池に注目し、2002年から固体高分子型燃料電池の開発を開始していました。
その後2013年にニッセイを連結子会社化した際、両社の技術交流会がきっかけで、当時10年もの経験と技術の蓄積を持つニッセイの燃料電池システム事業と、多彩なリソースを持つブラザー工業によるシナジー効果が期待できると考え、当社の新規事業として開発を移管しました。

具体的な市場のニーズとその対応

安全な水素吸蔵合金を採用し、空港の非常用バックアップとして実用化

水素が危険であるというイメージや、取り扱いにおける法令対応の煩雑さについて、当社に多くの声が寄せられました。そこで当社では、非危険物認定を受けた水素吸蔵合金を採用し、誰でも安心、安全に水素を運べることを理解いただく活動に注力しました。この取り組みが多くの方の関心を集め、お客様に当社製品をご採用いただいている理由の一つとなっています。
また、屋外に設置する電源として、信頼性については多くの厳しい要求がありました。これらに対し、お客様の実使用環境で実証試験と検証を行い、品質の向上に努めてきました。
これらの取り組みを評価いただき、成田国際空港株式会社様に非常時のバックアップ電源として当社製品「AC-UPSシリーズ」を84セット採用いただきました。水素吸蔵合金に充填した水素も含め、15年の期待寿命を実現し、連続で72時間もの発電が可能※です。重要な社会インフラ設備を、24時間停めることなく稼働させる手段として期待されています。
※72時間連続発電には水素の追加補充が必要となります。

次期型の開発スコープ

独自のハイブリッド制御による長時間発電に加え、氷点下環境での始動を実現

当社は2018年に燃料電池の販売を開始して以来、比較的低出力帯の燃料電池を提供しており、2023年には500W~1kW程度の燃料電池システム「AC-UPSシリーズ」の受注を開始しています。
低出力帯から製品化を開始したのは、水素供給の難しさを考慮したものでした。しかし近年、水素への関心が高まり、様々な利用シーンでニーズが出てきており、さらに高い出力帯の製品も提供したいと考えています。
当社の燃料電池システムは、水素吸蔵合金を用いた水素供給手段に加え、FCモジュールとバッテリーを組み合わせた独自のハイブリッド制御により、長時間発電や長寿命を実現しています。また次期型においては、氷点下環境での起動・動作にも対応させたいと考えており、豊田自動織機様のFCモジュールが-20℃での起動にも対応している点は大きなメリットです。自動車用FCセルを採用し、産業車両用途の信頼性要求に応えるFCモジュールを採用した当社発電機は、お客様に安心してご使用いただけると確信しています。

水素社会実現に向けた今後の課題

安全性を確保した上でより多くの用途への供給を目指して

水素は供給面にまだまだ大きな課題があると考えています。例えば、フォークリフトを扱う豊田自動織機様や燃料電池を扱うブラザー工業など、異なるアプリケーションを持つ多くの企業が連携し、需要をまとめることで水素の供給元を確保する必要があります。現在の規制では、水素燃料電池車やフォークリフトなど、一部の対象にしか水素ステーションから水素を供給することができません。法規制緩和による水素ステーションの活用は、最も期待される事例ですが、安全性を確保したうえでより多くの用途に供給できれば、水素社会の広がりは間違いなく加速すると感じています。

今後の豊田自動織機への期待

水素燃料電池にとどまらず幅広い領域で協力していきたい

フォークリフト用と定置式の燃料電池システムでは求められる仕様が異なるため、当社がシステム開発を進めるにあたり、多くの議論を重ねてきました。同じ愛知県内の企業同士、非常に密なコミュニケーションを取りながら真摯に検討いただいていることに大変感謝しております。また両社のターゲットとするアプリケーションが異なることから、今後はFCモジュールの提供だけでなく、幅広い領域で協力をお願いしたいと考えています。
他にも、中部圏では多くの自治体や水素関連企業が参加する「中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議」、「中部圏水素利用協議会」の活動が行われています。多くの課題に取り組むリード役としても期待しています。

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