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FCモジュール導入事例

Application可搬形発電機

導入製品:FCモジュール

実証試験での課題であった可搬性を改善するため、
水素燃料電池式可搬形発電機の小型軽量化を実現しました。

デンヨー株式会社様

研究開発部 第二課
課長
川畑 健太郎様

はじめに

今回、豊田自動織機の燃料電池モジュールをご採用いただいたデンヨー様は、可搬形発電機メーカの国内トップ企業として世界をリード、環境問題にもいち早く取り組まれ、主に建設現場やイベント会場で活用されている水素燃料電池式可搬形発電機の開発を積極的に進められています。今回、水素燃料電池式可搬形発電機の開発に取り組まれた経緯とそのご感想をデンヨー株式会社 川畑様にお伺いしました。
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開発の背景

建設現場におけるCO2排出削減の要望を背景に開発をスタート

初期検討を始めた当時は、トヨタ自動車の燃料電池自動車MIRAIの量産販売が始まるなど、水素の活用を通じたCO2排出削減を目指す取り組みが盛んになり始めた頃でした。建設業界では、当社が販売するエンジン発電機をお使いいただく中で、建設施工段階におけるCO2排出削減の数値目標を定め、その実現に向け対応を模索されていました。そこで当社では、屋外の様々な現場で使用できる性能と品質を備えた燃料電池式可搬形発電機の研究開発に着手しました。

それから豊田自動織機さんの協力を得て、フォークリフト用燃料電池をもとにした実証用1号機が完成した頃、日本政府が2050年カーボンニュートラルを表明し、さらには気候サミットにおいて新たな温室効果ガス削減目標の発表がなされたことで、建設業界から当社にお問い合わせいただく件数が急激に増加しました。

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実証試験

実証試験を通じ水素への不安を払拭、高まる燃料電池発電への期待

その後、メディア等で地球温暖化に関する一般市民への情報提供も盛んになり、野外フェスや屋外イベントの主催者様からの問合せも増えました。CO2排出削減の手段として水素利活用のニーズ拡大を感じ、われわれ開発陣の熱気も一気に上昇しました。

実証試験では一般市民の方に見学いただく機会を多く設けました。実際に運転している様子を見学いただくことで、水素に対する漠然とした不安を払拭し、正しく取り扱うことで安全に利用できるエネルギーであることをお伝えできたのではと思います。また、ある実証先では、日頃エンジン発電機を操作している作業員の方に、水素バルブの開閉から燃料電池式可搬形発電機の運転操作をレクチャーして、実証試験期間中の操作をお任せしたこともありました。豊田自動織機さんの燃料電池が低圧水素入力に対応していたこともあり、このようなことにも特に問題なく対応いただけました。

実証試験を通じて、燃料電池式可搬形発電機は概ね好評でしたが、エンジン発電機に比べるとまだ本体サイズが大きく重いため、現場での運搬・設置に制約があり、その点は改良の要望が多かったと思います。

量産型開発

小型で軽量、かつユーザーフレンドリーな量産型を開発

実証試験でのフィードバックをもとに、当社では量産型の開発にあたり小型軽量化に重点をおいています。これまでエンジン式可搬形発電機の開発で培ってきたノウハウを最大限に生かし、内部の冷却風の流れ方や、内部から発生する騒音を外に漏らしにくくする構造を量産設計に適用することで、今回の開発目標を達成できる見通しです。これらのノウハウを積み重ねていただいた歴代の先輩エンジニアには本当に感謝しかありません。
また小型化だけでなく、操作方法などのユーザインターフェースを実証機から刷新しています。液晶パネルで機器操作を直感的にわかりやすく、また通信機器を使って遠隔からモニタリングできる機能など、屋外の作業現場で操作する機器として、ユーザーが操作しやすく、かつ必要な情報を適切に提供するための工夫を凝らしています。

水素社会実現に向けた課題

正しい取り扱い方法の普及と、利便性の向上に向けて

水素は可燃性ガスであり、また運搬効率の観点から高圧ガスの状態で取り扱われます。そのため、安全に対する配慮を怠ることはできません。エンジン発電機の燃料であるガソリンや軽油も取り扱いを誤ると大変危険なものです。しかし正しい取り扱い方法が周知され、社会生活の中で安全に利用されています。水素についても同様に、正しい取り扱い方法の普及を進めていくことが重要だと考えています。
その上で、安全を担保しながら水素をより使い勝手良く活用していくために、新規技術開発による安全性の確保とあわせて、取り扱い関連規制の見直しによる利便性の向上が必要になってくるであろうと思います。当社では、燃料電池式可搬形発電機の実証試験や、水素に関する取り組みを通じて知り合った多くの自治体・企業様と連携して、水素の普及拡大に向けた活動を積極的に進めています。

今後の豊田自動織機への期待

ともに手を取り地球温暖化対策に貢献したい

これからも燃料電池の技術は益々進化すると考えています。その中でより小型に、より軽量に、より静音に、より長寿命に、より安価に、進化していくことを期待しています。

燃料電池を開発していく豊田自動織機さんと、当社のように燃料電池を使う機器を開発してユーザーに提供していく会社が、ともに手を取り燃料電池の普及を進めて、地球温暖化対策に貢献できれば、この時代を生きるエンジニアとして幸せなことだと思っています。

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